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なぜあなたは大麻を吸うのですか?
Smoker's Story Project

file #19
逮捕された経験と、「当事者」として今思うこと

26歳男性 日本在住

中学生のときに、国際人権団体の活動に参加する機会があって、世界の社会情勢全般に興味を持つようになりました。それ以来継続していろんなニュースを調べるのが日課になっていて(例えば中東のパレスチナ問題とか、イラク戦争とか、南スーダンの無政府状態のこととか…)、その中で「(2013年に)ウルグアイで大麻が合法化された」っていうニュースを耳にしたんですよね。

そこから国際問題のひとつとして、大麻にも関心を抱くようになって。いろいろ調べるうちに、そもそもオランダでは非犯罪化されていることや、多くの国で規制が緩和されつつあることを知るようになりました。

例えば殺人とか窃盗って、大概の国では犯罪じゃないですか。それなのに大麻は日本では厳罰をくらうけど、海外では合法って、そんなことってあるんだなぁと。国が変わるだけで、そこまで扱いが変わってしまうことが不思議だなって疑問を抱いて、自分が大麻を使う前から合法化活動のことなんかを調べるようになっていって。

とはいえずっと実際には入手する環境にはなかったんですけど、たまたま3年ほど前に、高校のときから10年来付き合いのある友達にすすめられて、初めて使用する機会を持ちました。僕が大麻の合法化活動なんかに興味があるってことを知ってて、声をかけてくれた感じですかね。

大麻は日本ではもちろん違法なわけで、一般的には例えばヤクザとか反社の人間が使ったり、流通させてるってイメージする方が多いと思うんですね。でも実際には、僕が関わってたコミュニティは正直拍子抜けするような、ほんとうに普通の人たちの集まりで。みんな平日は仕事して、休みの時に集まってキャンプしたり釣りしたり、ウィンタースポーツしたり…遊びのなかに、大麻がときどき介在するみたいな、そんな関係性でした。大麻を使って気がおかしくなるとか、そんなことはもちろんないし、お酒を飲むよりむしろ健全な関係でしたね。

頻度としては、一番使ってた時期で、一日一回、夜寝る前に、バッズをジョイントにして使用したり、リキッドを常用してました。でも入手できないときは週に一回とか、月に一回しか使わない時期もありましたね。逆に興味本位でたくさん使ってみた時期もありましたが、使えば使うほどキマるとか、量が増えていくみたいなこともなく、一日一回のときと変わらなかったです。

僕はふだんタバコもお酒もほとんどやらなくて。体感としては、お酒を飲んで、気持ちよく酔ってるときとか、お風呂に浸かってる感覚というか、そういう心地よさに近いです。もともと、スパイスとか香草とかも好きなんで、大麻の香りも好きで。感覚としては、漢方とか、ハーブに近かったです。

お酒とかタバコみたいに離脱症状みたいなものも、一切感じたことはないです。その効果を狙って使っていたつもりじゃないんですけど、むしろ肌荒れ(アトピー性皮膚炎)は、使う前と比べて落ち着いた印象を受けます。お酒は飲んで体温が上がるとアトピーの症状が出てしまうんですけど、大麻ではそんなことはなくて。夏はあせも、冬は乾燥で大変だったんですけど、大麻を使ってた時期は、自然に落ち着いてました。

あと、大麻が関係あるかは定かではないですけど、毎年冬は一回くらい体調を崩して寝込んでたのに、発熱を伴うような風邪も一切引かなかったです。仕事が忙しくて遅くまで働いたり、身体に負荷がかかるようなときにも、それに耐えられる感じがありました。それまでは、疲れが抜けなくてエナジードリンクでやり過ごすとか、仕事の付き合いで、強くないのにお酒を飲んで、体調が悪くなって翌朝起きられないこともあったんですけどね。

大麻を使った直後にその効果を感じて癒されるみたいな部分もあるんですけど、朝気持ちよく起きられたり、仕事に行くときに抑うつ的な気分にならなかったり、仕事の疲れが翌日まで残らなかったり、日常的に活発になって、全体的にバイタリティが上がった実感がありました。

少なくとも僕にとっては、良いことしかなかったです。バッドトリップとかも一切なかったですね。自然に一番いいコンディションがずっと続いてるような感じで、ある意味、スマートな使い方だったかなぁと。

ところが。数ヶ月前に、逮捕、起訴をされました。
仲間といて、THCリキッドを持ってるときに職務質問をされて。みんな一緒に警察に連行されました。口裏を合わせないように別々の部屋に連れて行かれて、無理やり供述させられるみたいな…スマホも押収されて、やりとりも全部見られてたんで、あとは本人たちの口から吐かせるだけだっていう感じで。精神的にかなりキツい出来事でした。

押収されたのがリキッドだったんで、中身を分析してみないと分からないっていうのもあって、当日は大麻を押収されて、そのまま解放されたんですけど、約40日後に改めて逮捕されました。その間に成分鑑定したり、スマホの情報から裏を取ったりされたみたいで、同じタイミングで仲間も一人逮捕されて。

当日は、朝7時くらいに自分が家を出た瞬間に「◯◯(名前)だな」って逮捕状を持った警察官に囲まれて、そのまま警察車両で連行、拘留されました。あとで聞いたら、朝5時くらいから自宅前で待機してたみたいで。

大麻以外のコカインとか覚せい剤とか、仲間内でも流通してないし、使ったこともなかったんですが、警察から見れば、他にも何かヤバいものを所持してるんじゃないかってことで、家宅捜索もされましたね。

警察署に着いてからはすぐ拘留が始まって、毎日3時間くらい警察と検察の取り調べをひたすら受けてました。

法律上、最長期間の23日間(警察署で72時間の拘留→書類送検→検察庁の管轄で10日間の拘留→さらに10日間延長)拘留されるケースが一般的みたいですが、僕の場合は弁護士の方のおかげで13日で釈放されました。弁護士さんのアドバイスで、警察や検察に丁寧に対応したり(若干不本意ではあったんですけど…)、あとは子供と妻がいるので、国外逃亡の可能性も低いということを考慮してもらえたようで。自分の場合はかなり珍しいケースみたいです。

そこから約一ヶ月あとに裁判があって、公判に一度行って、逮捕から約2ヶ月後に懲役一年、執行猶予三年という判決が確定して、全てが終了したという流れです。

逮捕されるまでは、芸能人の方なんかが逮捕されたっていうニュースを聞いても、自分ごととして考えるのは本当に難しかったです。今回、自分自身が当事者になったことで、厳密に逮捕されるとどういうやりとりがあるのか、法律はどうなっているのかといったことを知ることができたので…良い勉強にはなりました。

逮捕されて、会社側からは強制解雇か自主退職の選択を迫られたので、約4年半勤めていた会社を自分から辞めるというかたちを選びました。現在、判決から一ヶ月以上が経過していますが、新しい仕事を探しているところです。

仕事を失ったのは悲しいことではあるんですけど、新しく再スタート出来たり、別の環境で一からなにかを創り上げることができるって考えたら、いい方向にもいけるかなぁと。それこそ、ここで自分が悪い方向にいってしまうことは、社会や国家のよくない部分の思い通りになってしまうことだと思ってるんで。今後の人生は、自分次第だなって気持ちではいます。

執行猶予になって、実際に刑は受けていないけど、仕事を失うことになったり、逮捕のことを家族や友人にどういうタイミングで打ち明けるかを悩んだり…ただ、実際は、今でも大麻っていうものが悪いとは思っていないし、ほんとうに自分が悪いことをしたという気持ちにはなれなくて。

詐欺とか、痴漢だとか、窃盗とか、殺人なんかをしてしまったら、子供にも顔向けできない気持ちになるかもしれないんですけど、自分はこれまで真っ当に生きてきて、労働もしてきたし、税金も納めてきたし…日本の法律では禁止されている大麻を使った、そのルールを破ってしまったことだけが問題で、それ以外に悪いことをしたとは思えなくて。だから、自分がこんなにも社会的に追いやられる必要があるのかというのは、今も常に考えています。

そうは言っても、大麻について理解がある人はまだ世の中には少ないと思うし、反対の立場の人とも今後も付き合っていかなければいけないので、理解しあうために、自分の態度も考え直さないといけないとは思っています。

特に妻に対しては、本当は逮捕される前から、自分が大麻についてどう考えているかというのを打ち明けられていたらよかったなぁと思っています。そういうことをおざなりにしてしまって、逮捕というかたちで妻に知らせなければいけなかったことが、一番の罪だと感じています。過ぎてしまったことではありますが、大麻は悪くない、自分は真っ当に生きているっていうのを主張するのであれば、きちんと説明しておけばよかったです。

でも、おおもとを辿れば、繰り返しになりますが、やはり大麻は日本の法律で禁止されているだけで、そのことで自分がこんなに負担を強いられるのはどうなのかな、という思いが強いです。大麻が世の中にただただ普及してれば(そしてそうあって然るべきだとも思っていますが)、逮捕されることも、職を失うことも、妻や友人に迷惑をかけることもなかったのになぁという思いが、どうしても残ります。

逮捕から拘留直後は、自暴自棄になったり、躁鬱的な症状が出て、考えもまとまらず、精神的に追い詰められた状態でした。今は時間が経過し、判決が出ていろんなことが決まったので、心の負担も軽くなり、今後のことについて少しづつ考える余裕が出てきたところです。

妻のすすめで精神病院にも通っています。妻が精神科医の松本俊彦先生の論文のなかに、大麻について、僕が共感しそうなことが書かれていたっていうのを見つけて(松本先生が関わられている)病院を探してきてくれて。今担当してくださっている先生も、法律の枠組みではなく、科学的な観点から大麻を捉えて真摯に対応して下さる方で、その点も救いです。周りのひとに恵まれていて、ありがたい限りだなぁと思いながら過ごしています。

摘発されてからの数ヶ月、大麻は一切使用していませんが、そこから体調が大きく変わったといったことは一切ありません。通院はしてはいますが、そもそも逮捕・起訴されるとか、社会的に排斥されることがなければ、精神科に通う必要(=大麻を使ったことによる健康被害)はなかったわけで…大麻がなかったからといってめちゃくちゃ困るものでもないけど、あったらあったで、生活を豊かにできるものであるとは今も変わらず思っています。でも、まぁそれくらいのものだっていう、そういう感覚が、より多くの人に広まっていくといいですね。

これから生きていくなかで、自分は「犯罪者」、「大麻を使用したジャンキー」、「依存症の病人」っていうレッテルを貼られることは避けられないし、自分の過去を、自分の意志とは別に晒される可能性もあるので、その点については覚悟が必要だとは思っています。

一方で、今回の件をきっかけに、自分は大麻の問題に関しては当事者という立場から、世の中を変えていくような、何かの力になれたらとポジティブに考えるようにもなりました。

日本は大麻以外にもいろんな問題があって−例えばセクシャルマイノリティのこと、貧困格差のこと、在日外国人のことだとか−誰しも生活しているなかで、必ずそういった社会問題や人権に関わる問題に出会うことがありますよね。そういったことを解決していくのと同様に、これからも大麻の、人権にも関わる問題に、当事者として向き合って、日本の社会を変えていかなければならないと、改めて考えています。

大麻がカナダで合法化されたっていう2018年のニュースが、その翌年くらいに時差的に日本で広まって、その頃から徐々に聞こえてくる情報や、まわりのムードが「大麻は危険なものではない」っていうふうに変わってきたなぁっていうのは、自分も肌感覚で感じています。

それこそGreen Zone Japanさんが活発に活動されていて、YOUTUBEでいつでも、どこでも、誰でも、大麻についての質の良い情報が手に入ったり、それがTwitterで拡散されていたりっていう状況をみていると、自分が逮捕されたことは絶望的ですけど、希望的な部分もたくさんあるなぁっていうふうには感じています。

少しづつでも、誰かが動くことによって、あるいは自分が当事者として活動することによって、いつか世の中が変わる日がくると思うし、今回も、自分の意見を表明できることはありがたく思っています。大麻を嫌いになったわけではないので、いつか合法になった日本で、また使えることを期待しています。

(担当: 生田和余)

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当サイトは経験談を通して、大麻への理解を深めることを目的としており、大麻の使用を推奨したり、犯罪を扇動するものではありません。