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年齢を重ねながら大麻に教わったこと
30代男性 日本在住公開日:2022年2月12日
はじめに大麻に興味を持ったのは、北海道を拠点に活動してるヒップホップグループのTHE BLUE HERBの音楽の影響です。東京住まいだったんですけど、自分の田舎も北海道で、札幌なまりにすごく親近感があって。なんかこう懐かしがりながら曲を聞いていたら、オブラートに包みながら大麻のことを歌ってるんですよ、すごくかっこよく。それでどんなもんなんだろうっていうところから興味がわきました。あと何かちょっと悪いことに憧れるっていうか。
いつか機会があればなぁと思って過ごしてて、20代前半にインドに行った時に初めて試しました。買うところからかなりハードで、路上ですれ違いざまに声をかけられるんですよ。アイコンタクトで通じ合う感じ。付いて行くと「こういうのがある」って言われて半ば無理やり買わされてね。ゲストハウスに持ち帰って試してみても、全然なんともないし、本物なのか何なのかも分からなくて…一定の達成感はありましたけど、まだまだこんなもんじゃないなって感じでした。
数年後、今度はカンボジアに旅行にいったときにもまた手に入れて。音楽聴くとすごく良いっていうのは知ってたんで、ジブリの歌で「テルーの唄」っていうのがあるんですけど、それを聞きながら試してみたんですね。そしたらそのときは起き上がれなくなって。一晩中頭の中でその音楽が響き渡ってて、やっぱ変な使い方をしてるんだろうなって感じもありました。
本当に素晴らしいものだなって思えたのは3回目のとき。帰国して、カンボジアで知り合った日本人の友達を訪ねたときにいろいろ教えてもらいました。そのときにようやく加減とか吸い方とかが分かった感じでしたね。安心できる状況で、大好きな友達と、一緒にお喋りしながら…すごく楽しい体験をしました。
良いときの体験は、とにかく幸せだなっていう感覚になるんですよ。なんて言うんだろう、今まさにこの空間と、その相手に100%集中して、自分を捧げてるっていうか…そういう感覚になって、生きててよかったなぁとか、生まれてきてよかったなぁとか。飲み物何飲んでも美味しいし、お菓子食べてもすごく美味しいし、この時間がずっと続けばいいのになっていう感覚ですね。なんだかニコニコしてしまうし、あと一度笑い出したら止まらないっていう。いつ止まるんだろうこの笑いはっていう位、何から何まで面白いっていう状態、よく聞きますよね。
その後もワーキングホリデーでオーストラリアに9ヶ月くらい行ったり、ネパールとかタイに行ったりして、20代はいろんなところに旅をしてたんですけど、その間もずっと傍ら一緒に大麻がありました。基本1人で旅をしてるので、日本での体験とは違って、1人で嗜む感じでした。
ワーホリ中は木材工場やレストランでけっこうハードに働いてて。帰ってきて、シャワー浴びて、ビスケットどーん、ジュースどーん、ノートパソコンどーんって置いて、ヘッドホンつけて、吸いながらお菓子食べて、YouTubeの動画とかミュージックビデオとかをガンガン流しながら、2時間ぐらい吸うっていうのが楽しみでした。
あとは自分の今までのことに思いを巡らせて、これまで友達とか家族に発してきた言葉とか行動とかを振り返るっていうような体験が多かったです。1人で海外生活を始めて、全く新しい体験をするってことは、全く新しい自分が出てくるっていうことじゃないですか。そういう体験を、全部素晴らしいものにしてくれるっていうか。寂しいとか日本に帰りたいっていう気持ちに寄り添ってもらえている感じで、自然と日記とかすっごい書けるんですよ、寂しかったら寂しいって言いながら、ワーーーって。もう照れもなく、恥じらいもなく。
そんなふうに日記を書いたり音楽を聞きながら、生まれてきてよかったなぁとか、今まで生きてきて日本にすごい大事な人がいるんだなとか…もし吸ってなかったら、心細くて結構暗くなっちゃってたのかなぁと思うんですけど、それをポジティブな感覚に変えてくれる体験だったかな。
日本では基本、介護士なんですよ。それで20代はお金貯めて、旅に出てみたいな生活を繰り返してたんですけど、帰国したタイミングでうつっぽくなったんですよね。ワーホリ行ってる間に3.11が起きてて、戻ってきたら、日本が放射能で全く別の世界に変わってる気がしたり、年齢的に一緒につるんでたような友達に、どんどん彼女ができたり結婚したりして遊ぶ友達もいなくて、寂しかったのかな。原発の事とか放射能のこともすごく気になって、海外から帰ってきて何やってたんだろうなっていう感じもあったし、どう生きていこうかっていう感じになってて。
それでちょっと元気ない状況だったんですけど、元々、結構政治に興味があったんで、原発のこととか、沖縄の米軍基地のことをいろいろ調べたり、講演会行ったりとかしてて。その頃、三宅洋平が立候補したりとかしたじゃないですか。そのあたりでワーッと平和活動的なものの盛り上がりが起きてて、そういうのに参加しつつ、その波に乗って、自分も元気になっていった感じがありました。そんな中で、また大麻を手に入れることができて、吸いながらどんどん良くなっていったっていうのもありますね。
介護の仕事をしつつ、そういう平和活動みたいなことを続けているなかで、今の奥さんと出会って子供ができて。一旦大麻ともオサラバして、東京から地方に移住しました。子育てを田舎でしたいっていうのもあったけど、東京が辛く感じたっていうのもあります。仕事場行くまで1時間近くかかってて、あの満員電車の、夕日がちらっとしか見えない帰り道とかに蝕まれていくっていうか。自由な自分の感性がどんどん削られていくし…海外で散々やりたい放題して戻ってきて、また東京でサラリーマンっていうのか、無理だなぁと。
大麻を使ってたことは奥さんにも話してたけど、仕入れてくれてた友達ともちょうど移住のタイミングで縁が切れたんですよね。無きゃないで大丈夫なんですよ。あったらいいなと思うし、時々思い出すけど、どうしてもっていうわけじゃないっていう感じです。
子育てと仕事に追われる日々の中で、すごくストレスを抱える時期があって。仕事は夜勤もあるし、次にいつ何が起きるかわかんない状況で緊張感もすごくて、結構やっぱり大変で。今思えばそれが奥さんに出ちゃってたんだろうなって思うんですけど、ちょっとしたことでイライラしたりとか、口調が強くなってしまったりとか、夫婦喧嘩が絶えない時期がありました。以前はそんなことは全くなかったから、奥さんを傷つけてしまったりして、自分のことがすごく嫌で。
そういうタイミングで大麻をまた手に入れることができたんですよ。で、吸ってみたら、なんて言うんだろうな…「はっ!しまった!忘れてた!!!」ってなって。
優しさとは、とか、相手に優しくするって、自分に優しくするってことだよなぁとか、そういう、自分が信じる本当の優しさを子供に見せるべきだよなぁとか…ごめんねとか、ありがとうとか、忘れてた愛情とか感謝とかが、わぁーーーって湧き上がってきて。自分はこんだけ追い込まれて余裕のない生活をしてたんだなぁって気がついたんですよね。もっとおおらかに平和に暮らせるのに、家族のためとはいえ、自分からそういうのを手放してきてしまったんだなっていう感じで、音楽を聞きながらポロポロ泣けてきちゃいました。
酔いが覚めるといいますか、大麻を吸った後のそういう感覚がずっと持続するわけじゃないんですよ。また仕事が大変になれば不安になったりイライラしたりするし。でも、あぁ最近自分良くないなあとか、また人に優しくできてないなとか、どうすればいいかなって戸惑うときは、吸って、あぁそうだよなぁ、そうだそうだ忘れてたってなって。その状態のときに、ちゃんと奥さんに手紙書いて渡したり、ごめんねってしたりとかしてました。
イライラしたり、優しくなったりやっぱり不安定だとまわりも混乱するじゃないですか。だから意識的に優しい気持ちの状態に寄せていって、大麻がなくてもちゃんとその気持ちを忘れないように整えながら生活するようになって。20代の時みたいに、ただ楽しみたいからとか、音楽を気持ちよく聞きたいからだけじゃなくて、まわりのためにも自分を良い状態に保つための使い方に変わったなって、この前気づいて。顎が外れるほど笑ってた自分ではなく、そうやって賢くなったんだなっていうか。
そうしているうちに、生き方や生活を見直す時間が増えて、結果的に仕事を辞めることを決断しました。お金を稼げても、心身削られていつも緊張してるような感じというのはよくないなってことで。退職を決意するに至る流れのなかでも、やっぱり大麻は欠かせなかったですね。
自然回帰っていうか原点回帰みたいな感覚になるじゃないですか。お金がないと成立しないような生活を送ってて、だからこそ不安なんだけど、でも本当はそうじゃないよなっていう。なぜかはわからないけど、大麻ってそういうことを自然と教えてくれて…本来あるべき姿というか、本来の自分を引き出してくれるから、自然とそういう思考になっていくんですね。
今、畑やりたいなぁと思ってるけど、自給自足の田舎暮らしがしたいってわけでもなくて、ただ、どっちかに偏り過ぎても自分は安定しないんだなあって。バランスが大事で、自分にとって何が大切なのか自然に選べるっていいですよね。
みんなが望んだときにね、望んだだけそういう感覚と向き合えるといいですよね。大麻を吸うと本当に優しい気持ちになれるから…自殺者が減るんじゃないかと思いますよね。
今議論されている「使用罪」の問題は、どうもこうもないっていうか、なんでそんなことするのっていう感じしかないですね。わりとお巡りさんたちの利権とか、お金に繋がることなんだろうなって思うんですけど、本当にセンスないなぁって思います。せっかく国際的にはここまで進んだのに、日本は今そのカードを切るんですかっていうことですよね。元々センスのない政治をする国だから、どっかではやっぱりなぁって、やりかねないなって諦める気持ちもあるんですけど。
昔イラクで人質になった学生たちがいましたよね。日本の政府も報道もすごく冷ややかな対応で。その時の問題とも繋がるっていうか。原発の放射能漏れが起きたときも一生懸命隠そうとしたり、本当のことを伝えようとしてる人を変人扱いしたりとか、ずっとそういうことしてきたよなぁと。庶民の幸せというものをちらつかせながら、結局は与えることはしなかった、してこなかった。
今の使用罪の問題も同じセンスの無さっていうか。がっかり感が一緒ですね。一番大事な命とかっていうものを全然大事にしてない感じが、これまでのこととつながる気がしています。
別の方のインタビューにもありましたけど「大麻がないと電車に飛び込んでました」っていう人を量産するような、社会の雰囲気とか、政治のあり方が本当はおかしいことで…大麻がなくたってみんなが幸せで、整ってれば大麻は嗜好品にしかなりえないんだけど、でも本当に追い詰められてる人がたくさんいるから、やっぱ命綱として必要になってるんですもんね。
社会活動家とか平和活動をしてたときは、いろんな理想もあったんですけど、正直今こうやって家族ができて、子供がいてってなると、もう政治のことなんて考えられないぐらい毎日めまぐるしくて。10年後の政治よりも晩御飯のおかずは何しようっていうことの方で、頭がいっぱいになってしまって、なかなか本質的なことを変えられないなって諦めの気持ちが出てきてしまいます。今回お話ししたことが、少しでも何かの役に立ったら嬉しいです。
大麻から教えてもらったことを一言で言うと…生きてるっていうことは、常に奇跡が起きているっていう、「常時奇跡中」っていうのがあって。大麻を吸ってる時に、手が動く、足が動く、僕が生きている、大切な人が生きてる、今ここにいるとか、触れるとか、手を繋げるとか、一緒にご飯食べるとか、全部数えていくと、その、常に奇跡が起きている状態なんだよってことを深く実感できたことがあって。それを忘れないように、今も生きて、生活してるっていう感覚ですね。すごいですよね、そんなふうに思わせてくれて。奇跡が起き続けてるよっていう、普段そんな風にね、なかなか思わないから。
友達とも話したことあるんですけど、大麻を吸ってたどり着く体験とか感覚って、本当は別に大麻がなくても、たどり着けるんですよ。多分、シラフでも全然いけるけど、何かが邪魔してそうなれないだけだと思うんですよね。例えば断食とか瞑想とか…いろんなものが削ぎ落とされて、頭がシーンとするような空気感が似ていて、断食3日明けのナチュラルハイはかなりそれに近いかなぁと。
大麻は自分自身にそういう力が元々備わってて、それを手伝ってくれるにすぎないというか。大麻が何かもたらしてくれるっていうより、元々あるものが掘り起こされるみたいな感じ。例えば4歳〜7歳くらいの子どもってスーパーポジティブに今だけを生きてるじゃないですか。多分あの感覚なのかなぁと思います。自分は4歳の記憶ないですけど、子供見てるとなんか一緒だなぁって。その感覚を忘れないで、毎日の奇跡に感謝して生きていけたらいいですよね。
最後に。スモーカー同士だと「吸いながら何するのが好き?」みたいな会話、結構あると思うんですけど、僕は吸いながら『男はつらいよ』ってあるじゃないですか、寅さん。あの映画を観るのがすごくいいと思います。いやほんとすごいんですよね、この映画ってこんなにすごかったんだって。あのセリフ回しとか。音楽とか景色とか。あと、人の心の本質を本当に喰ってるセリフとか。シンプルなんですけど、すっごいあったかくて。いろんな土地に行くじゃないですか。監督自身もその土地の一番いい景色を撮ろうって一生懸命頑張ってるのがわかるし。
誰も悪くないのに、なぜか傷つきがあって喧嘩しちゃうとかあるじゃないですか。そういうのとか善悪じゃないよとか、みんな愛し合ってるけどうまくいかないんだよとか、何が幸せだと思う?っていう問いとか…最高の相性です。誰かと上手くいかないときとか、人の気持ちを知りたい時、恋愛で悩んでたり、どうやって生きていこうかとか、自分は孤独だなって思ってたりとか、そういう人にすごく手を差し伸べる、素敵な素敵な映画で。山田洋次監督、本当に素晴らしいです!
(担当: 生田和余)
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