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アイリーな世界をおしえてくれたもの
40歳女性 日本在住公開日:2021年10月30日
18歳の頃、お洋服屋さんでアルバイトをしてたんですけど、そこでレゲエミュージックと出会ったのが最初のきっかけです。レゲエって大麻と切っても切り離せない音楽じゃないですか。先輩にダンス(レゲエダンス)に誘われて、その流れで。
10代で怖いもの知らずだったから、タバコと何が違うんだろうって興味もあったし、あと先輩にNOっていえない雰囲気もあって、軽いノリですすめられたジョイントを吸ったのが初めてでした。
最初から頭がファーっとする感覚で、気持ち悪くなったりとか、テンションが落ちるとかもなかったです。レゲエってサウンドシステムっていう、スピーカーの前で音楽聞いたりするんですけど、聞こえ方が全然違って。特にベース音が響いて、気持ちが良くなってすごく踊りを楽しめてる自分がいました。
レゲエダンスってお尻を振ったり、けっこう過激に見えるところもあるから、恥ずかしさを紛らわすのに普段はお酒を飲んでから踊ってたんですよね。そういうのが自分の中でなくなる感覚で、人の目を気にせずダンスに入り込むことができて、お酒をのまずとも素直に自分を表現できるっていうのが嬉しかったです。使いながら段々こんなものなんだ、なるほどねってその感覚を覚えていった感じですかね。
うちは家庭がけっこう厳しくて、高校時代も門限はずっと7時でバイトも許してもらえなかったので、18.19になって初めて夜遊びしたんです。使って、何かあったら親に迷惑かかるよねっていう不安は少しあったけど、言うたら「遅い反抗期」みたいな感じですかね、別にいいでしょっていう。「箱入り」みたいな感じやったから、やっと親とも距離が取れてほっとしたところもありました。
自分で買ったりとか売ったりとかはなかったけど、踊りに行くと誰かが必ず持ってて、みんな回すっていう感じで、踊るときにはいつもそこにあるっていう環境でしたね。
昼間はお洋服屋さんで仕事して、週末に踊りに行ってたので、平日は夜になったら先輩の家にたまって、吸おうやみたいな。ほぼ毎日くらい集まってたかな。吸って、音楽聞いたり、しょうもない話して笑ったり…そういう生活をずっと…5,6年続けてました。
その間にジャマイカにも4,5回行きました。地元にはレゲエダンサーが自分たちのグループくらいしかなかったから、本場でちゃんと修行しよう、みたいな流れで。音楽とダンス、あと文化を知りに行く感じかな。いつもビザが有効な期間(2週間)滞在してました。
ジャマイカの様子をみてると、大麻を使ってる人がジャンキーになったり、犯罪を起こしたりするわけじゃないっていうのがよくわかりました。スラムというか、物質的には貧しい暮らしをしてても、みんな明るいし、気持ちを前向きに持って生きてるのが印象的でしたね。
日本でもジャマイカでも大麻は違法だけど、現地の様子を知れば知るほど、だれにも迷惑かけてないのに、禁止されてるのって変だよねっていう感覚が強まっていきました。
現地で知り合った他の日本人の人たちとも大麻についてよく語ってて。わたしはそれまで大麻について積極的に学んだりすることはなかったんですけど、そこでいろんなことを教えてもらいました。ずっと吸ってきた先輩が「なんでダメになったか知ってる?」って、戦後の歴史なんかについても分かりやすく話してくれて。
すでに「体験」した後だから、大麻が悪いものだから禁止されたわけではなくて、社会のいろんな事情が絡み合ってこうなってるんだっていうのが、自分の中にストンと入ってきました。諸説ありますけど、都市伝説的なものも含めて、あぁなるほどっていう、納得できる話をいろいろ聞きましたね。
ジャマイカから帰ってきた後は、毎回1,2週間は仕事する気にならなかったです。レゲエの文化は「お金がなくて何が悪い」っていう反骨精神に基づいてるから、日本の「お金がないと生活できない」っていう状況が、馬鹿らしいっていうか、とてもしんどいものに思えて。理想と現実のはざまで、ある意味BADに入る感じでしたね。
あと。二十歳のときに、子宮頸癌の診断が出たけど、そのあと手術しないで済んだのは大麻の影響だったのかなっていう経験もしました。大麻の影響なのか、本当のところは分からないから、あくまで自分の体験として話してることなんですけど…
診断されたときは若いから癌についての知識もなくて。ショックを受けて仲間に話したら「(大麻には)癌細胞を小さくする、再発をなくす効果もあるらしい」って言われて、人体実験をしてみようって思ったんですよね。最初に良性か悪性かわからなくて組織を切って調べたけど、それだけでも怖くって、検査も手術も嫌で。
その後、お酒もタバコもやめず、不摂生な生活も変えなかったけど、大麻を吸い続けて2年くらいでポリープがなくなったんですよ。ほんと、ただ吸い続けてただけです。半年に一度は検査に行くべきだったけど「(薬物反応が)出たらどうしよう」って血液検査が怖かったのと、日常生活で不正出血なんかの不調や違和感もなかったから、そのままやり過ごしてて。で、友達に促されて2年ぶりに検査したら、なんと、何にもなくなってたっていう。それからは、病院行くのも、薬飲むのもなるべくやめようってなりました。
Twitterとかで、同じような経験をされた方をみかけたりするけど、わたしはわかるっていうか、そうなんだろうなって思いながら読んでます。不思議な体験ですよね。
ジャマイカで聞いた話の中に、大麻が日本で禁止されているのは「日本の医療が崩壊するから」っていう説がひとつあって。うつ病の治療薬とか鎮痛剤が日本では大量に消費されてるけど「大麻があると売れなくなる」っていう話が、自分の経験を通じてストンっと入ってきました。
大麻をどうして使ったのかと改めて聞かれると…
もともとは、すごい人見知りだし、親の教育の影響で、人に対して不信感を抱いてるところがあって。使うと誰とでもフレンドリーに喋れるようになるんですよね。相手の言っていることを否定することなく「そういう考えもあるんですね。でも自分はこう思います。」って素直に喋れるようになって。よくお酒飲まないと喋れないって人がいるけど、あれと同じだと思う。
少し関係がぎくしゃくしてた親に対しても、相手を否定しないで、一旦受け止めてから、話ができるようになりました。
親、厳しくって…衝突するくらいなら、自立すればいいんだって思って、家を出たんですよ。ワンクッションおけばいいことがわかって、いい距離感で「あなたはあなた。わたしはわたし。」っていうスタンスでいられるようになりました。
なんていうかゲットーの暮らしとかをみてて、ちゃんと普通に子供を育てるって、すごいことなんだなって。外に出てみて、育ててもらった感謝の気持ちの方が大きくなったし、親のすごさも分かりました。
あと、性生活も全然違うんですよね。敏感になるっていうか、流れる時間が、ものすごくゆっくり、濃厚に変わるんです。恥ずかしさもないからお互いオープンな気持ちになれて。「付き合う」とか、ややこしいこともなく、ただ楽しむ。純粋に人と付き合えるツールでもありました。
結婚して妊娠がわかってからは、9年間、一切やめてました。
そうしたら、それまで親と距離を置いてうまく付き合えていたのが難しくなってしまって。妊娠中、親に「これがいいからこれしなさい」「動いちゃダメ」「運転もあぶない」「外を出歩いちゃいけない」みたいなことをずっと言われて…家から出れなくなっちゃったんですよ。
大麻がクッションになってたから、パートナーともぶつかり合うことが多くなって…わたしはわたしで、ひとつの命を産み育てないといけない責任感に押しつぶされた感じで。「出産うつ」「産後うつ」の状態でした。
食べてないと落ち着かないし、妊娠中は38キロ太りました。どんどん醜くなっていく自分と、命の責任を負わなきゃいけない不安感で外に出られないっていう状態が、子供が3歳になるまで続きました。
実の親は口うるさい、義理の親は「面倒をみる」っいうから近くに引っ越したのに「子供嫌い」って言い出して頼れない、パートナーはストレス発散をするために買い物に走って借金をする、引っ越しして街から離れて車がなきゃ出かけられられないのに(借金のせいで)車もない、自分は醜くなっていくっていう…地獄のループっていうか。
結局パートナーとは出産を機にずっとセックスレスにもなって、家のなかでもギスギスして家庭内別居みたいになっていって。夫婦喧嘩をみてて、子供もかんしゃくを起こすし、あぁもう良くないなって。それで子供が4歳のときに離婚して、シングルで育てていくことを決めました。
今振り返ってみても、大麻は自分にとって、なきゃいけないものだったなぁと。夫婦生活でも上手くコミュニケーションを取るのに大麻は最大の武器だったんですよね。もし医療大麻があったら、頼れたのかなぁって。夫婦の関係も改善することが出来たんじゃないかと思ってます。
子育ては最初の3年間は本当にしんどかったけど、子供のためにもちゃんとしないとって、必死にやってるうちに、少しづつ生活も落ち着いていきました。
でも、数年前に就職した会社がめちゃくちゃ忙しいし、すごいパワハラで…「血便血尿」っていう状態が一ヶ月続いて、13kg痩せたんです。
CBDを使うと一瞬良くなるけど、効果は長く続かなくて。それでもなんとか仕事をして…結局、子供を食べさせていくためには血便血尿でも仕事を続けなきゃいけないのかって、2年間悩んだんですけど…今月から休職することにしました。
休職手続きのために診断書が必要だったから、心療内科を受診したんですけど、そこも予約が一ヶ月待ちで…世の中、みんな病んでるって思いました。自分は「適応障害」の診断を受けたんですけど「薬飲むと、元に戻ってこられないけどどうする?」って言ってくれる先生で。いらないって断りました。
子供が6歳くらいになって、昔の仲間ともまた会えるようになったタイミングで大麻を再開しました。どうしても精神的にきついって思った時は、昔の仲間と一回リセットするみたいな感じで。そうすると、物の見方が変わって、自分がそこまで負のループに陥らなくて済みました。
今は、別の道を探しているところです。多分元の会社には戻らないだろな…まぁ痩せたことはラッキーだったなって、キレイになってよかったって前向きに思うことにしてます。あと、大麻から入って、CBDとかオーガニックヘンプオイルとか、今もいろいろな組み合わせを試しながら楽しんで使ってます。
大麻は自分にとっては害のないもので、強いていうなら逮捕されるデメリットしかないなぁって思ってます。
問題なのは、質の悪いものが、バックヤードで売られてること。ニュースで「大麻を使用して自殺」とか「暴力を〜」とかって聞くことあるけど、それって絶対混ぜ物吸わされてるよねって、覚醒剤とか。
経験があれば、吸ったらすぐわかるけど、買う時は、見た目ベースだとわからないから…そういうのを一括りに大麻って言われると「大麻って危ない」って印象になっちゃいますよね。医療大麻がちゃんと認められて流通が整ったら、おかしな混ぜ物がバックヤードで流通しないから、その方がいいって思います。
今って自殺や鬱が本当に多いですよね…そういう人たちって、大半が「薬を飲む」っていう行為に依存してるだけで、それで命を止められている場合もあって。それなら、大麻でいいよねっていう。
アルコールだと、友達でも被害者がいるけど、暴力的になってDVにつながったり、あとうちの父親もそうだったけど記憶をなくすまで飲むっていう…日本ってアルコールは嗜好品として税金払えばOK、タバコもOKで、冷静に考えてみれば、身体を悪くしていくことはOKなのに、改善していくものはNOとしている国って…すごくおかしいですよね。
今「大麻使用罪」が検討されてるけど、CBDでも尿検(査)したら絶対出ないとも言い切れないじゃんっていう。取り締まる側も知識もないのに、やってることがはちゃめちゃすぎて。
既得権益っていうか、こうって決めて利益を得てる一部の人たちのだけのために、たくさんの人が犠牲になる世の中の仕組みになってるなって。人として、人の命を大事にしたいとか、世の中を本当に良くしたいって思ってたら、そういうふうにはならないんじゃないかって思います。せめて医療では使用が認められるべきだと思ってます。そしたらもっと、世の中変わっていくんじゃないかな。
そう。あともうひとつ大麻のデメリットを付け加えると「はたらきたくなくなる」っていう(笑)。そうしたら、まぁ困る人がいっぱいいますよね。何にも考えずに働く「人材」がいなくなると、国にとっても大損害だから。厚生労働省とか、頭のいい人たちはそれをたぶん分かってるんですよね。
無駄な仕事は減らして、一人ひとりに合った、無理のないやり方の仕事をどんどん提供していけば、いい社会に変わっていくと思います。得意なことがあっても、それしか出来ない、その知識しかない人って、いっぱいいるんですよね。
たとえば大麻の知識はめっちゃあるけど、歯もないし、生活保護受給者だし、とか…そういう人ってディスペンサリーがあれば、そこでがっつり知識を生かして働けるじゃないですか。豊富な実体験を生かしてストリートの知識で専門家になれるっていう。それはそれで面白い世の中になるよねっていう。
ほんとうに、みんな人それぞれで。世の中のみんなが相手を思って、あなたはあなた、わたしはわたしって、まず受け入れることができたらいいなって。みんながそう思ってくれたら本当にいい世の中になるのにねって思います。「人に優しく、自分は自分」って生き方をすれば、害を与える生き方をしないんですよね。ボブ・マーリーも人種差別について歌ってたりするみたいに、もともとレゲエがそういうアイリーな音楽ですし。
そういうふうに考えられるようになった原点は、私の場合は、18,19歳くらいまで親に「こうじゃなきゃダメ。」って「洗脳」されてたのが、大麻で一気に抜けたことかなって。いろいろあったけど、10代のあの日から、わたしの人生が始まったなぁって思っています。
(担当: 生田和余)
※本プロジェクトは、以下の企業から支援を受け運営されています
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正高 佑志 (まさたかゆうじ)
医師。一般社団法人Green Zone Japan代表理事。著書に「お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)」
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三木 直子 (みきなおこ)
翻訳家。一般社団法人 Green Zone Japan 理事。訳書に『マリファナはなぜ非合法なのか?』『CBD のすべて—健康とウェルビーイングのための医療大麻ガイド』『大麻草でがんは治せるか?』他。
Twitter: @greenzonejapan, @indoorcat629 -
長吉 秀夫 (ながよしひでお)
作家・舞台プロデューサー。ステージ制作の傍ら、ジャマイカやインド、北米や南太平洋などを訪れ精神世界、ドラッグ、ストリート・カルチャーなどを中心に執筆。ロック、日本の祭り文化についての造詣も深い。『不思議旅行案内』『タトゥー・エイジ』『大麻入門』(ともに幻冬舎)、『医療大麻入門』等
Twitter: @NagayoshiHideo
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廣橋 大 (ひろはしだい)
看護師。当サイト開発・管理。
「ASA Magazine」ライター。
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生田 和余 (いくたかずよ)
セラピスト。自然療法を生かしたウェルネスケアに従事しつつ、東京工業大学修士課程に在籍し、文化人類学の視点から大麻に関する研究に取り組んでいる。
Twitter: @kazuyo_rk_
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Eiju from Blue Dreamz
ロサンゼルスのマリファナ姐ちゃん。
大麻ショップ店長経験あり。
LAから大麻の情報を発信している活動家
-Youtubeチャンネル登録者数3万6千人
-毎週土曜日ライブ配信「Talking About Weed」
-現地ロサンゼルスでプライベートツアー『ブルドリツアー』を行う
Twitter: @bluedreamzla
Instagram: @bluedreamz_la
Youtube: ブルドリチャンネル by Blue Dreamz -
中本 俊(なかもとしゅん)
WEBマーケティングの支援会社で勤務。
世界一周中に体験した大麻の可能性を多くの人に知ってもらうために活動中。
Twitter: @shun_nakamo -
永井 大貴(ながいだいき)
過去、CBDアイテムを扱うシーシャ屋の運営経験あり。
現在はドキュメンタリー映画制作に取り組みながら執筆活動をしている。
発信活動を通して『愛とは何か?』を伝えていく。
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