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なぜあなたは大麻を吸うのですか?
Smoker's Story Project

file #24
日常を彩り、人の痛みを感じ、そして社会活動へと突き動かしたもの

59歳男性 日本在住
公開日:2021年9月29日

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Reading by Dai Hirohashi


大学生の時に先輩にすすめられたのがきっかけです。中学の時からタバコも吸ってたし、お酒も飲んでたので、大麻も同様に興味本位って感じでした。

最初は普通に健康には良くないと思ってました。吸い続けるとバカになるとか。”ダメ絶対”教育の影響ですね。でも別にお酒やたばこだって害はあるし、あまり気にせずに海外行った時とかにちょこちょこ吸ってました。

ところが30代後半の頃に、海外から大麻に関する色んな情報が入ってきたんですよね。オランダでは普通に吸えるとか、カンナビスカップが開催されているとか、「害が少ない」って言う評論家がいたりとか。全てに対して「どういうこと!?」って思いましたね(笑)それから大麻を肯定的に捉えるようになりました。

この頃ってまだマジックマッシュルームが合法で、僕独自のネットワークを持ってたんですよ。きのこ好きな人ってみんな大麻も好きなんですよね。なので望めば大麻が手に入る人間関係があったんです(笑)最初は買ってたのですが、そのうち自分で栽培するようになって、以降ずっと自給自足です。

僕の人生の半分以上は大麻とともにあります。社会的にはドラッグに分類されたとしても、自分の中では、大麻はその他の嗜好品とは一線を画す存在です。生活と一体化し、お米みたいに必須なものです。なぜそうなのかって言われてもいまだに説明しきれない部分はありますが、それくらい大麻のよさって多岐に渡っているし、だいたいの問題を解決できちゃうんですよね。

目的としては主に人間関係を円滑にするためのツールとして使ってました。人はみな考え方はバラバラだけど、共存していかなければならない。妥協したり、人に合わせたりして、”自分”というものを削らないといけないわけです。これは家族だって例外じゃないし、SNSでもそうだと思います。こういうのってやっぱストレスたまりますよね。

お酒でこれを解消しようとすると、体調悪くなるし、生活に支障がでて辛いんですよ。大麻だとからだに負担かけることなく、少し吸うだけで楽になれるんです。お酒みたいにケンカになることもないし、むしろ人間関係はよくなります。お酒と大麻は全然違います。

大麻を肯定する人は、大麻があれば戦争がなくなるって言いますよね。

フーリガン(※サッカー場の内外で暴力行為を行う集団)っているじゃないですか?お酒飲んで暴れるんですけど、オランダでコーヒーショップの営業時間を延長したら、暴動が減ったみたいなんですよ。そういう前例があって、ある年のユーロカップでは、ポルトガルがオランダ警察に協力を要請して、観戦中の大麻の使用を許可してお酒を控えるようにしたことがあったんです。そしたらスタジアムでは一切乱闘は起きなかったって。

すごくないですか?大麻を吸えば平和になるってことですよ。大麻を吸うと他人を尊重できるようになるんですよね。

別に世界平和とまでは言わないけど、個人レベルでもいいと思うんです。一人ひとりがお互いを尊重できれば、争いは減りますよね。その積み重ねが大事なんじゃないかって思います。

大麻を吸うと自分の内面に意識が向きます。錯覚かもしれませんが、自分をサンプルとして人間の本質を観察することで、他者のことも理解できるような感覚があります。

これは大麻がもたらす独特なハイであり、お手軽宗教体験ですね。頭で考えるのと、心で感じるのって180度違いますが、これを統合できるのが大麻だと思います。別に座禅組んで瞑想したりしなくてもいいわけですよ。大麻好きなお坊さんって案外いますしね(笑)

こう考えると大麻が必要なのは、別に病気の人だけじゃないですよね。このストレスフルな社会で穏やかに生きていくために大麻は必要だと思いますし、それはある種の医療目的とも言える気がします。

今はもう亡くなってしまいましたが、24時間母の介護をしていた時期がありました。母の病気はパーキンソン病(神経難病の1つ)。徐々に手足も動かなくなって、最終的には言葉も話せなくなりました。

例えばかゆいところがあっても、それを伝えられないんですよ。それってすごく辛いことじゃないですか。どうすればいいんだろうって悩んで、どうにか以心伝心でやっていくしかないって思って頑張りましたけど、当然うまくいかないことが多くて、歯がゆい日々でした。

結構想い入れて介護してたので、母が亡くなった時は精神的にものすごいダメージを受けました。介護が生活の一部になってたので、一気に空虚になったんですよね。今は少なくなりましたが、前までは辛くて叫んだりして、トラウマになってました。

引っ越したりできれば、手っ取り早く気分が変わるんでしょうが、なかなかそうもいかないのが現状です。そんな時に救ってくれたのが、やっぱ大麻なんですよね。トラウマから解放されるとまでは言えませんでしたが、かなり楽になりました。

アメリカで次々と医療大麻が合法化した背景として、戦争で心的ダメージを負った兵士たちに大麻が有効だったって話があります。日本は戦争こそないものの、色んな形で心に傷を負っている人はいますよね。そういった人たちにも大麻は必要だと思います。

僕は料理したり、山や海といった自然あふれる場所に行ったり、DIYが好きだったりするんですけど、それら全てのシーンに大麻はしっくりくるんです。

僕は大麻のことを「幸せの前借り」って表現してました。お金を稼ごうとか地位を築こうとか、そういうのって結局幸せになりたいからじゃないですか。そんなことしなくても大麻を吸うと幸せな気分になれるので、ガムシャラに生きる必要はないって思えるんですよ。自分にとって何が幸せなのかってことが分かってくるんですよね。

そうすると変に生活の負担がかからないし、時間に余裕も生まれてくる。僕はトレードをやって生活費を稼いでますが、午前中しかやらないんですよ。丸一日やればお金持ちになれるかもしれないですけど、別においしいお米を食べて大麻吸えれば十分幸せなんです(笑)

昔知り合いと話していたのですが、今でこそカラーテレビが当たり前だけど、昔テレビは白黒でしたよね。テレビなんて映像と音声があればいいわけで、カラーである必要はないでしょう。でも一度カラーテレビを知ってしまった以上、もう白黒には戻れないですよね。やっぱ色鮮やかな世界のほうがいいんですよ。

これは日常生活も同じです。大麻があるとないじゃ、同じ日常でも色鮮やかさが全然違うんです。深みがでるんですよ。そりゃ大麻を吸わなくても平気ですよ。生きていけます。でもそれはテレビの話と一緒で、大麻を吸った世界を知ってしまった以上、そこには戻れないってことです。

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実は40代になってからずっと大麻合法化活動をしてきました。団体を組織したり、マリファナマーチをオーガナイズしたこともあります。

大麻を吸うと自分に正直になります。そうすると社会の悪い部分に対しても嘘つきたくなくなるんです。加えて、他者の痛みもすごく感じるんです。そしたら自分も痛いわけで。どうしたらこの痛みを取り除くことができるのかって考えているうちに、気づけば社会活動をしてました。大麻以外にも様々なデモ活動に参加しましたよ。死刑反対派にもなりましたしね。大麻がなかったらこんな気持ちになんてなれなかったですよ。

20年間活動してきましたけど、まさかこれほど変わらないとは思いませんでしたね。言論には限界があるって感じました。たばこよりも害がないとか言い続けても、何も手応えを感じなかったです。

大麻を吸う人を増やしたほうが早いかなって思ったりしましたけど、それは犯罪者を増やす行為になってしまうわけで・・・さすがにやってられませんよね。

よくまわりからは「自分が吸いたいからじゃないか」とか「金儲けしたいからじゃないか」って言われたりしましたけど、違うんですよね。社会をよくしようとしているだけなんですけど、全く理解されなかったですね。シンプルなのに・・世間がゆがんで感じました。

大麻を合法化するっていうのは、結局大麻を吸う人を、社会が受け入れられるのかどうかって話なんですよね。例えばオランダでは、大麻を吸っている人は社会に悪影響を及ぼさないってことを、多くの国民が知ってたから、スモーカーに対する規制がゆるいわけですよ。

一方で日本は島国で排他的な部分がありますからね。実際僕も大麻のことは周囲の何人かにしか話せず、相手を選ばざるを得ませんでした。

でも、今は違ってきてると思います。海外の情報が簡単に手に入るようになったし、正高先生の活動や、公の場で医療大麻を推進した高樹沙耶さんの功績も大きいですよね。

僕は去年大麻で逮捕されてしまって・・もう活動からは離れています。

大麻に救われ、彩りある人生を送っていましたが、逮捕で全て崩れました。友達なんか一気にいなくなりましたよ。大麻を吸う人も、吸わない人もです。もちろん中には心配してくれた人もいましたけど・・ひどいと「お前のせいで全部処分したぞ、どうしてくれるんだ!」って言ってくるやつもいましたね。

一緒に合法化活動してた仲間からも「もう離れてくれ」って言われました。驚きでしたよ。大麻で逮捕することに異議を唱えてた仲間たちから、こんな扱いを受けるなんて・・

弟には捕まる前から大麻の話をしていたので理解してくれたのですが、弟の嫁は「もう顔もみたくない」って言ってたみたいです。被害者のいない犯罪で、正当性もあるのに・・・人間って何なんだろうって思いました。

正直言って日本はあまり好きじゃないです。政治とかメディアは”国民の幸せ”を大義名分としているはずなのに、逆に弱者を見捨てているように思えます。納税って義務じゃないですか?幸せになるために大麻を吸っているだけなのに、税金で逮捕されるんです。要するに、自ら幸せを奪うために税金を払うことが義務になってるんですよ。この国にはいられないなって思います。

大麻と人間の社会には深い結び付きがあるんじゃないかって思うんですよ。
社会って成長に伴い、醜い部分とか間違った部分って色々でてきますよね。こういうのっておかしいって思いながらも徐々に黙認されていく傾向にありますが、大麻はそれを許さないんですよ。こういう部分が明確に見えてしまうので、無視できなくなるんです。まるで社会のバランサーのような存在に感じます。

だから社会情勢が悪くなればなるほど、大麻は求められていく気がします。だから昨今世界では大麻の合法化が進んでいるようにも感じるんですよね。紛争は絶えないし、環境破壊は進むし、今はコロナもありますしね。

こんな中で日本は逆行して”大麻使用罪”を創設して厳罰化しようとしている。これは本当に不幸な話ですよ。日本は権力者が都合のいいような社会を作っているようにしか思えません。

日本人は我慢することが美徳であり、国民性になってます。でも海外をみればわかるように、本来は民主主義って、悪いものには国民一人ひとりが声を挙げべきです。こういう理由もあって、海外では大麻の合法化や非犯罪化が進んでるんだと思います。

生きていくって大変ですよね。苦しい思いをしながら生きていく人は多いです。大麻も違法だし。でも本当は生きるって楽しい。快感ですらあります。現実と本質が全く逆です。私はそんな世の中で、大麻のある暮らしで人らしく自分らしく生きてこれました。

大麻を吸うことができれば、辛い現実の中でも気持ちを楽にでき、生きている実感も得られます。他者を尊重することができて、社会にも意識が向きます。幸せ感を得ながら健康に人間らしく生きる。それが大麻を吸う理由かもしれません。

(担当: 廣橋大)

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当サイトは経験談を通して、大麻への理解を深めることを目的としており、大麻の使用を推奨したり、犯罪を扇動するものではありません。